他の追随を許さないレディーズ靴のプロフェッショナル
浅草で修行を積んだ先代が、靴の修理業から始めて、60年代にレディースシューズの製作を始めた高進製靴。現在は国内大手シューズメーカーのOEMを中心に、女性の脚をきれいに見せられる靴作りを目指しながら、快適な履き心地も同時に追求している。レディースシューズの中でも特にパンプスは、トゥやヒールにシワを寄せない釣り込みやヒールの打ち付けなど、少しのズレも大きく目立つため繊細な技術が必要だが、高進製靴は豊富な経験をもとに丁寧に仕上げているのが大きな特徴。そんな実績を誇るノウハウを活かし、自社ブランドとして新たに作り上げているのが〈シューズベーカリー〉だ。
目標は町のパン屋のように愛される存在
髙橋社長の妻の実家がパン屋を営んでいることから名付けられた〈シューズベーカリー〉。
OEM生産を続けてきた高進製靴のシューズは、ブランドや小売店を介して、間接的にユーザーの手に渡っている。しかしオリジナルブランドは、粉を練り、発酵させ、焼き上げて販売するパン屋のように、自分たちが作った靴を直接ユーザーに提供したいという思いを込めてネーミングした。町のパン屋のように愛される存在を目指し、企画から設計、裁断や底付けまで、すべての工程を社内で完結させている。〈シューズベーカリー〉にラインナップしているのは、ヒールパンプスを中心に、歩きやすいフラットシューズやスニーカーも展開。 統一して言えるのは、カジュアルよりも上品な雰囲気のものが多く見受けられる。そして今後は、より多くの新作のリリースを予定し、メンズシューズの展開も準備中だ。
レザーを無駄なく使用する“もったいない精神”
〈シューズベーカリー〉は靴の技術を用いて作られた、革の雑貨も豊富にラインナップする。サンプルを製作するために革を一枚購入しても、すべてを使いきれず余る場合が多く、一枚の革には傷や色ムラがあるため、すべての製品の仕上がりを統一しなければならないOEM生産では、使えない部分も多々ある。それを無駄にしないために会社の取り組みのひとつとして考案され、雑貨の製作を開始した。小物の場合、靴と違って左右の色味を揃える必要もなく、小さい製品なら傷を避けて使い切れる。カメラストラップやカードケース、ペンケース、ブックカバーなど日常的に使用できるものを作り、最初は知り合いなどに提供する限定的な展開だったが、5年ほど前から販売を開始。今では他の企業とのコラボレーション作品が生まれたり、希望するオーダー品を作ったり、靴だけではない〈シューズベーカリー〉の魅力となっている。現在はSDGsのサスティナブルな取り組みとして世界的に取り組まれているアップサイクルだが、〈シューズベーカリー〉の場合は日本の“もったいない精神”を胸に製作している。
履く人に寄り添った提案で特別な一足を提供
そして、今後は“町のパン屋さん”のような存在を目指すべく、本社内にショップを構えるヴィジョンが。シューズとの出会いの場は主にショップだが、作り手から直接ユーザーに届けるので、ショップにないものを提供したいと考える。シューズの設計から手掛けているので、既製のサイズが合わなかったり、足の悩みを抱えていたりすれば、可能な限り調整に対応したり、在庫のレザーから選ぶカラーオーダーをしたり、場合によってはお気に入りの生地を持ち込んで製作することも。シューフィッターの資格を持つ社員もいるので、足の形や歩き方から靴の選び方のアドバイスができるかもしれないので、相談に訪れてみるのもユーザーにとっては良い機会。地域に密着し、履く人に寄り添う〈シューズベーカリー〉の姿勢は、ユーザーにも地球にも優しい。